パンダの住まいや飼育環境ってどんなの?ジャイアントパンダの繁殖数日本一のテーマパーク「アドベンチャーワールド」に聞いてみた

パンダの住まいや飼育環境ってどんなの?ジャイアントパンダの繁殖数日本一のテーマパーク「アドベンチャーワールド」に聞いてみた

今回は和歌山県が誇るジャイアントパンダ繁殖数日本一のアドベンチャーワールドに、
パンダが求める住環境、暮らしている部屋の間取りやお庭での過ごし方などを聞いてみました!

案内:品川 友花
アドベンチャーワールド ジャイアントパンダ飼育スタッフ
飼育歴11年半
これまでに5回の出産に立ち会い7頭のパンダの子育てをサポートしてきた。

聞き手:塩路 耕太郎
タカショー プロユース企画部 販売促進課所属
カメラが趣味でアドベンチャーワールドへ行くとシャッターが止まらない

塩路:本日はジャイアントパンダの住まいと暮らしについて色々教えてください!

品川:わかりました!よろしくお願いします!

パンダが暮らす2つの施設

塩路:まずはじめに、パンダが暮らす建物について教えてください。

品川:アドベンチャーワールドでジャイアントパンダが暮らす施設は【ブリーディングセンター】と【パンダラブ】の2つに分かれています。

ブリーディングセンター
パンダラブ

ブリーディングセンター

品川:ブリーディングセンターには、運動場が屋外に2つ、屋内に2つあります。
屋外運動場は合計約840㎡、屋内運動場は約270㎡の広さがあります。

塩路:とっても広いですね!屋外運動場だけでも約250坪。これはのびのび暮らせそう!

品川:さらにバックヤードには寝室が4部屋と、お母さんが出産をする産室と、赤ちゃんを育てる保育室、あとはエサを作るキッチン(調餌場)があります。
あとは「竹庫」と呼んでいる竹を保管する大きな冷蔵庫と、私たちが普段パンダの管理をしたりモニターやパソコンを置いている観察室を備えています。

バックヤードで健康チェック 永明(えいめい)

塩路:バックヤードにもたくさん部屋があるんですね。寝室は4つも!

品川:そうなんです。パンダは縄張りを持って単独生活をする動物なので、1頭につき、1部屋を準備します。
今はブリーディングセンターに2頭のパンダが暮らしているので、2部屋を繋げて少し広めに使っています。
あとは、寝室の中に体重計と健康管理をするためのスペースも備えています。

塩路:1頭につき1部屋あるんですね!寝室は1部屋あたりどのくらいの広さですか?

品川:ざっくり6~8帖くらいですかね。

塩路:思ったよりコンパクトなんですね!
私の家の寝室とちょうど同じくらいの広さです!(笑)

品川:パンダはそもそもあまり動き回るような動物ではなく、そこまで大きい部屋を必要としないんです。
ちなみにベッドみたいな感じで寝台を部屋の中に設置しています。

塩路:ベッドもあるんですね!ベッドのサイズは人間と同じぐらいですか?

品川:人間のベッドよりは小さいですね。パンダは四つんばいになった時に120センチ~150センチぐらいの大きさになるので、横になった時に体が乗るくらいの大きさですね。

塩路:ベッドで丸くなって寝てるパンダを想像したらめちゃくちゃ可愛いですね。パンダはお風呂には入るんですか?

品川:お風呂は入らないのですが、暑い時は水浴びをすることがあります。
外の運動場には池があるのですが、寝室には池がないので、水を飲む用のお皿を外から出し入れできるようにしており、それで水浴びしたり、私達がホースで水を掛けてあげることはあります。

水浴びする楓浜(ふうひん)

塩路:水浴び気持ちよさそうです!トイレは決まった場所にあるんですか?

品川:トイレも特に場所は決まっていません。食べながらでも寝ながらでも出しますので、夜には結構ウンチだらけになるんです。
ウンチをする場所が決まっているパンダもいまして、部屋の隅へするパンダがいたり、場合によっては、外の運動場の外周にモートという、お客様エリアとパンダエリアの間に深い堀があるのですが、その堀に向かってウンチをするパンダなどもいますね。

塩路:それぞれ個性があるんですね。

品川:そうですね。歩きながらウンチしたりとか、いろいろな場面で出していますね(笑)

塩路:めちゃくちゃ自由ですね(笑)
人間の住まいと比較して考えてみると、屋内外の運動場がリビング兼お庭みたいなイメージなんでしょうか。

品川:日中はだいたい運動場で過ごして夜になったらバックヤードの寝室に戻ってくるので、そのようなイメージですね。

パンダラブ

品川:パンダラブには少し別の特徴がありまして、野生で暮らしている環境に似せて、地面が全て斜面になっているんです。

斜面になっているパンダラブの屋外運動場

品川:ここに岩を設置したり芝生を張ったりしてパンダが過ごしやすい環境を作っています。

塩路:本当ですね!元々山奥に住むパンダには居心地が良さそうですね。
パンダラブにも運動場以外に寝室などがあるんでしょうか?

品川:はい。パンダラブには屋外運動場が1つ、屋内運動場が2つ、寝室が6部屋あります。あと調餌場、竹庫、観察室があります。

塩路:パンダラブもとっても広い建物なんですね。
パンダは何歳ぐらいまで親子で一緒に暮らすんですか?

品川:だいたい1歳過ぎから長くても1歳半ぐらいまで一緒にいて、そこからもうひとり立ちをします。子どもはパンダラブへ引っ越して、お母さんがブリーディングセンターに残るという形になります。

塩路:なるほど。ひとり立ちした後は、子ども同士で会って遊んだりしないんですか?

品川:アドベンチャーワールドではだいたい2年おきにパンダの赤ちゃんが生まれていているのですが、2年で体格差がかなり大きくなってきますので、兄弟で一緒に遊ばせることは難しいですね。檻越しに対面することはあるんですが。

塩路:そうなんですね。パンダは野生でも基本的には親から離れたらもう一頭で暮らしていくんですか?

品川:そうです。だいたいメスで4~5歳、オスで6~7歳で性成熟を迎えて縄張りを持つようになりますので、その頃には完全に単独行動しています。

塩路:アドベンチャーワールドでは双子も生まれていたと思いますが、体格差があまりない場合でも、大きくなったら別々に行動するんでしょうか?

品川:大きくなったら別々に行動させます。メスの双子の場合は大体4歳くらいまで一緒にいましたが、やっぱり4歳にもになるとケンカが激しくなってきて、どちらかが怪我をしてしまいそうになったりとか、体もだいぶ大きくなってきますので、なかなか一緒にいるのも危なくなってきます。

親子で遊ぶ良浜(らうひん)・楓浜(ふうひん)

品川:オスメスの場合は、性成熟の年齢がだいぶ離れていて、メスの方が早くに大人になるんですけど、オスは甘えん坊でいつまでも遊ぼうよってすごいじゃれついてくるんですけど、メスがすごい嫌がって本気で怒ったりして(笑)
4歳ぐらいになると体重も100キロ近くなり力も強くなるので、やはりそれぐらいの時期には離れて別々で暮らすようになります。

塩路:子育てでいうと、お父さんパンダが育児をすることはないんですか?

品川:野生ではオスは交尾をした後はもう自分の縄張りで過ごし、子育てには参加しません。
アドベンチャーワールドの場合は、どうしても親子が同じ施設内で過ごしていますので、何か行動する時は子ども達がお父さんを見て真似をすることはありました。
例えば、あるお父さんパンダが鳴き声をあげておいしい竹をおねだりしていたら、それを見た子どもが「いっぱい声を出したら竹がもらえるんだ!」と気づいてすっごい鳴く練習をしていたというのはありましたね。

塩路:微笑ましいエピソードですね!

パンダの1日の過ごし方

塩路:パンダの1日の暮らしのスケジュールを教えてください。

品川:日によって変わるのですが、1日のうち12時間以上は寝て過ごしています。それ以外の時間は大体数時間おきに食べて寝て、食べて寝て、という暮らしをしています。

竹の葉を食べる結浜(ゆいひん)

塩路:羨ましすぎます…。

品川:お腹が空いていれば一日中ずーっと食べ続けてることもありますし、全然寝ないこともあれば、運動場に出ててすぐに寝てしまう時もあります。

塩路:パンダはどこででも寝られるタイプですか?

品川:そうですね。個体によってお気に入りの場所もありまして、芝生の上に転がって寝るパンダもいますし、池のほとりで丸まって寝るパンダもいます。外の運動場には少し高めの木でできた遊具があるのですが、その遊具の上で寝るパンダもいます。
「高いところが安全」という野生の本能がありますので、子どものパンダほど高いところを好んで木の上で寝ることは多いように思います。

塩路:外敵に襲われないために高いところに登るのは野生の本能なんですね。
1日の食事の量はどれくらいなのですか?

品川:主食はもちろん竹で、1日に15~20キロ食べます。

副食としてリンゴ、ニンジン、動物用ビスケットを400~600グラム与えています。

塩路:めちゃくちゃ食べますね!1日の大半を食べて過ごすということは、食事の時間が決まっているわけではないんですか?

品川:お腹がすいたら食べて、お腹がいっぱいになったら寝るという本能のままに生きています。

塩路:ますます羨ましい…。

品川:たくさん竹を与えても気に入ったところしか食べないので、美味しいところを食べ尽くしたら、その都度、私たちが部屋を掃除して新しい新鮮な竹に交換する、という繰り返しです。

塩路:なんて贅沢な…来世はパンダに生まれたいです。

品川:竹は時期によってもおいしい種類が違いますので、だいたい年間7~10種類の竹を使い分けています。春にはタケノコをあげたりもします。
寒い冬の時期は葉っぱが美味しい時期で、夏は幹の硬い部分が美味しいようで好んで食べています。

タケノコをほおばる彩浜(さいひん)

塩路:そんなに色んな竹を使い分けているんですね!だんだん美味しそうに見えてきました。パンダが食べる竹はどこで調達されているんですか?

品川:大阪と京都から週に4回仕入れていて、最近では静岡の伊豆の方から仕入れることもあります。
パーク内にも何種類か竹を生やしており、緊急の時や足りない時にはそこから調達してきます。

お庭の掃除やお手入れ

塩路:タカショーはお庭の会社なので、お客様から「お庭は憧れるけど、やっぱりお手入れが大変ですよね」というお声もいただくことがあります。
パンダが暮らす空間の掃除やお手入れはどうされていますか?

品川:屋外運動場の場合は芝生を張っているのですが、パンダがその場所を使い終わったら都度、ゴミを取って、汚れがひどいところは水流しをして掃除をします。
月に1、2回芝刈りをしたり、植栽が伸び過ぎたら剪定したり、やはりそういったお手入れは必要ですね。

運動場を清掃する飼育スタッフ

品川:あと運動場には樹木も何本かあるのですが、だいぶ木が伸びてきてしまっていて…。パンダは木登りが得意な動物なので登れるようにしたいのですが、もし木登りしてる時に木が折れてしまったら、パンダが外に出てしまう可能性があるので、今は鉄板を巻いて高いところまでは登れないようにしています。

塩路:確かにパンダは体重もあるので、かなり丈夫な木じゃないといけませんね。

品川:木の代わりに登れるように少し高さのある遊具を作ったり、擬木を建てたりして高いところに上がれるように工夫しています。

夏のお庭の過ごし方

塩路:日本の夏は高温多湿ですが、パンダが元々生息するエリアとは気候が全く違いますよね。この暑い日本の夏でもパンダが過ごしやすいように工夫していることがあれば教えてください。

品川:おっしゃる通りパンダは寒い地域に生息する動物で、結構冷たいものが好きなので氷結擬岩(FRPで作った岩の中に、空気中の水蒸気を凍らせる機械を仕込んだもの)を設置しており、いつでも涼めるようにしています。

氷結擬岩の上でくつろぐ結浜(ゆいひん)

塩路:氷結擬岩なんてものがあるんですね!これ自分の家の庭にも欲しい!(笑)

品川:パンダもかなりお気に入りで一日中ここにいるときもありますよ。あと外の運動場にはミストファンも設置しています。

塩路:これなら暑い屋外でも快適に過ごせそうですね。

品川:テントで日陰を作ることもありますが、それでも夏の屋外はやっぱり日差しが強いので、気温が20℃~25℃くらいに上がってきたら冷暖房完備の屋内運動場に移動して過ごしてもらっています。

塩路:最高の暮らしすぎます。ところで、パンダは日焼けするんですか?

品川:パンダの地肌はピンク色なんですが、全身毛皮で覆われていて露出してる部分がほぼないので日焼けはしないかもしれないですね。

塩路:確かにそうですね。蚊に刺されたりとかもしないのでしょうか。

品川:かなり毛の密度が高いので、蚊が肌までたどり着くのはなかなか難しいのではないでしょうか。
毛の少ない目の周りや手のひらとか、もしかしたら刺そうと思ったらさせる場所はあると思うのですが、蚊に刺されているのは見たことはないです。

意外と人間っぽい?パンダの性格

品川:人間っぽいなーと思うのは、パンダも「お腹がすいたら寝れない」とか、昼間寝る時は眩しいみたいでみんな目を隠して寝たりするとかですね。

塩路:人間っぽいなー!親近感が湧きます。
パンダの赤ちゃんが飼育員さんの足に抱きついている映像も見たことがあります。

品川:パンダは遊ぶのが大好きな動物なので、特に子どものパンダは遊ぶことで体力をつけたり、筋肉を鍛えたり、お母さんから生きていくために必要なことなど、色々教えてもらうんです。なので人間に対してもじゃれついてきます。

親子でじゃれる良浜(らうひん)・楓浜(ふうひん)

品川:体力が有り余っていて全力で遊ぶっていうのは共通しているかもしれないですね。
アドベンチャーワールドにいるお母さんパンダの良浜(らうひん)は、大人になっても子どもに対して遊びを仕掛けに行くほど遊ぶのが大好きなお転婆お母さんなんです。

塩路:遊ぶ場所が屋内と屋外にあると思うのですが、外よりも中の方が好きというインドアタイプのパンダはいますか?

品川:個体にもよるんですけど、運動場にいるときよりもバックヤードの方がよく竹を食べるパンダはいます。
他には、外の風の音や工事の音が気になってちょっとソワソワしてしまうから中の方が落ち着くパンダもいましたね。

あと住まいの共通点として、パンダの暮らす建物にはIoT技術が詰め込まれておりセキュリティもしっかりしています。
パンダは肉食動物と同じ扱いをしていますので、部屋ごとにしっかりと鍵をかけて安全を保っています。特にパンダラブの場合は電子錠を導入しており「鍵のかけ忘れ」「扉の閉め忘れ」リスクを軽減させるだけでなく、飼育スタッフと動物の予期せぬ接触を回避する仕組みも取り入れています。
遠隔地からでもパソコンや携帯電話を通して状況が把握できるようになり、飼育スタッフの作業安全性向上とパーク全体の安全マネジメント強化を実現しています。

塩路:それはパンダも働く皆さんも安心ですね!
人間の住まいでも、最近は外出先から玄関の鍵を開け閉めできたり、スマホでインターホンに対応できたりする製品もありますよね。
IoT技術で住まいと暮らしがどんどん便利で安全になっているのは大きな共通点ですね!

パンダがのびのび育つために

塩路:パンダがのびのび育つために心掛けていることや、パンダと暮らす中で乗り越えてきたハプニングなどがあればお伺いしたいです。

品川:そうですね。どんな小さなことにも「気付く」ということを心掛けています。動物と人間は言葉で会話することができないので、お腹が空いたとか具合が悪いとか、何かちょっと怖がっているとか水飲みたいとか、パンダが「何を望んでいるのか」「どうしたいのか」というのを気付けるように心がけています。
パンダはとってもグルメな動物で美味しい竹しか食べないので、パンダ達の行動を見て、その子達が望む竹をあげられるように観察することも心がけています。

あとは音に敏感な面もあるので、ストレスを与えないように周りの環境にも気を付けています。

塩路:会話ができなくともしっかり観察して見逃さないように対応してあげるのも、ひとつのコミュニケーションかもしれませんね。

品川:嬉しかったことは、出産に立ち会って子育てのサポートをし、成長していく姿を見守ってこれたことですね。これは本当に嬉しいです。初めて目が開いたとか、初めて歩いたとか、初めて大人と同じウンチが出たなど、ちょっとした成長の過程もやっぱり我が子のように嬉しいですしね。

塩路:それはめちゃくちゃ嬉しいですね!飼育スタッフでなければ味わえない感動がありますね。

品川:ハプニングとしては、木登りして遊んでいたら木が折れてパンダも私たちもびっくりしたっていうのを何度か経験したことがあります(笑)

遊具で遊ぶ楓浜(ふうひん)

塩路:人間の住まいは、たまに模様替えやリフォームをすると思いますが、パンダは運動場の遊具に飽きたりしないのでしょうか?

品川:遊具は木で作られており、外に出していると劣化してしまうものなので、それは数年おきに建て替えています。
遊具と呼んではいるんですが、実際には寝台に近い感じのものでもあるので、あんまり飽きないかも。
パンダの赤ちゃんが外の運動場にデビューするときは、新しい滑り台を付けてみたり、遊具の数を増やしたりします。

新しい遊具で遊ぶ楓浜(ふうひん)

塩路:可愛すぎる…!
パンダの住まいや暮らしについてたくさん教えていただきありがとうございました!

品川:ありがとうございました!


 

パンダと人間の住まいと過ごし方にも、意外と共通点があり驚きましたね!
パンダが暮らす程の広い家を建てるのは難しいですが、夏の暑さ対策、子どもがのびのびと遊べる環境など、快適な暮らしへのこだわりは真似できるかもしれません。
ぜひアドベンチャーワールドに行かれた際は「パンダの住環境」にも着目して楽しんでみてくださいね!

>>アドベンチャーワールドHP

~~~おまけ~~~
はペンギンの飼育数もアドベンチャーワールドが日本一なのを知っていましたか?
現在8種類約500羽のペンギン達がアドベンチャーワールドで暮らしています。
中でも1番大きいエンペラーペンギンの繁殖に成功してるのは日本でアドベンチャーワールドだけ!

エンペラーペンギンの親子