日本庭園の魅力と庭屋一如の心

日本庭園の魅力と庭屋一如の心

みなさんは日本庭園を訪れたことはありますか?

今回は、お寺巡りが趣味のタカショー社員Iと、全然詳しくない社員Nの2名で、日本庭園の歴史や魅力、伝統的な日本建築が体現してきた「庭屋一如(ていおくいちにょ)」の思想についてご紹介します。

案内:I
タカショープロユース企画部販売促進課所属。
動画制作、YouTubeチャンネル・SNS運用担当。
大学時代は美学系の学部に所属し、歌舞伎について研究。
寺社仏閣・美術館巡り、歌舞伎・文楽鑑賞が好き。

聞き手:N
タカショープロユース企画部販売促進課所属。
Webサイト制作担当。
小学校時代から野球をしており、大の阪神ファン。
サッカー・テニスなどのスポーツ観戦も好き。

N:今日は色々教えてください!よろしくお願いします!

I:はい!よろしくお願いします!

日本庭園とは?

I:まず最初に、日本庭園と聞くとどんなイメージがありますか?

N:「昔のお庭」というイメージがあります。今どきのお庭はテラスやファニチャー、タイル、お花など、おしゃれで華やかさがあるのに対して、日本庭園は松の木や盆栽・石や池といった、質素ながらも風情があり落ち着いた感じ…。「侘び寂び」っていうやつですかね。

I:たしかに和の趣があって古風なイメージがありますね。「名勝1」といって、国の文化財として指定されている日本庭園は全国にたくさんあるんですよ。

N:そうなんですね。日本庭園と言えば、日本三名園として有名な兼六園・後楽園・偕楽園くらいしか思い浮かばないです。

I:金閣寺や二条城の庭園なども有名ですよ。Nさんは行ったことはありますか?

二条城 二の丸庭園

N:どちらも行ったことはありますが、庭園を観るためではなくお寺やお城の建物を観るために行きましたね。ただ、建物と庭園と周囲の景色、敷地内全体で完成された空間に心惹かれた思い出があります!そもそも「日本庭園」ってどういうお庭を指すのでしょうか?

I:私自身日本庭園は大好きなんですけど専門家ではないので、今回の記事で紹介するにあたり、文献や入門書を読んで勉強してきました。文献によると、庭園とは「祭祀・儀式・饗宴・逍遥・接遇などの場として、あるいは観賞の対象として、一定の空間的・時間的美意識のもとに造形される屋外空間。おもに土・石・植物・水などの自然材料を用いて作られる。建築に付随、あるいは建築を包含することが一般的2」と定義されています。

N:へ~!庭園=観賞するものいうイメージがありましたが、お祭りや儀式で使うための庭園もあるんですね。建物とセットなのも知らなかったです。

I:日本庭園の歴史は長く、ひと口に「日本庭園」といっても、時代ごとの住宅様式・文化・社会とともに変遷があり、用途や規模・形式もたくさんあることは私も初めて知りました。

N:タカショーは庭・外構製品を販売する会社ですが、庭の歴史について深く考えたことはなかったです。もっと知りたいです!

I:日本の庭園文化は、飛鳥時代に朝鮮半島の百済からもたらされたのがはじまりとされています。平安時代には、「作庭記(さくていき)」という日本最古の造園マニュアルがつくられているんですよ。

N:1000年も前に庭づくりのマニュアルが既に存在していたというのは驚きです。先ほど日本庭園にはさまざまな形式があると言っていましたが、例えばどんなものがあるんですか?

I:池や小川など水を用いた「池泉庭園」や、水を使用しない砂と石で構成された「枯山水」などがあります。また、歩きながら観賞する庭園を「回遊式庭園」、建物の中から座って眺める庭園を「座視観賞式庭園」と呼ぶそうです。Nさんが訪れた、金閣寺の庭園や二条城の二の丸庭園は、「池泉庭園」と「回遊式庭園」が合わさった「池泉回遊式庭園」になります。

N:枯山水は歴史の授業で聞いたことがありますが、観賞の仕方によってもいろいろな分類があるとは!

I:平安時代には仏教の信仰に伴って、極楽浄土を再現した「浄土式庭園」が多くつくられています。平等院の庭園がその代表例です。枯山水は禅宗に影響を受けています。他にも、茶の湯の発展とともに、茶室に付属して作られた露地庭園(茶庭)などがあります。

平等院 庭園

N:仏教や当時流行していた文化とも深い関りがあるんですね。こんなにたくさん種類があるなんて奥が深い…!勉強になります。

日本庭園の魅力

N:Iさんは日本庭園のどんなところに魅力を感じているんですか?

I:私が感じる日本庭園の魅力は2つあります。1つは、心が落ち着くところです。和の風情あふれる空間の中で、お庭や周囲の景色を眺めながらぼーっと過ごしていると穏やかな気持ちになれます。風で木が揺れる様子や池の波紋など、ちょっとした変化を眺めるのも案外楽しくて、気がついたら結構時間がたっています笑

N:自然を眺めていると、心身が癒されてリフレッシュできますよね。

I:お寺によく行くんですけど、縁側に座り込んでしばらく景色を眺めている人は結構多くて。ひと息ついてゆっくり自然を眺める時間を楽しむ心は、みんな共通して持っているのではないかと思います。

瑠璃光院 瑠璃の庭

I:季節によって違った景色が楽しめるのがもう1つの魅力です。季節ごとにお庭の装いが変わるので、同じお寺に何回も行くことがあります。瑠璃光院というお寺は、2階の書院にある机の天板に映り込む「瑠璃の庭」の景色が有名で、春と秋の2回拝観しました。

瑠璃光院 瑠璃の庭(新緑) 
瑠璃光院 瑠璃の庭(紅葉)

N:新緑や紅葉が色鮮やかで圧巻ですね!これは行ってみたい。日本庭園を観賞する際にはどんなところを注目して観ているんですか?

I:お庭全体の構図、石・植栽などの配置や意味について考えながら観ています。「見立て」という演出技法があって。例えば、東福寺龍吟庵(りょうぎんあん)にある「龍の庭」では、龍が海の中から黒雲を巻き起こして昇天する様子を枯山水で表現しています。石を龍、白砂を海、黒砂を黒雲に見立てて配置されています。

東福寺龍吟庵 龍の庭

N:なるほど!言われてみれば、敷かれている砂が雲や波に見えてきました。配置されている石や砂にも意味があるんですね。

I:今自分の目の前に雲海が広がっていて、龍が飛んでいく。そんな様子を空想しながら眺めるのも楽しいですよ。他にも、風景や思想・故事などをモチーフにしている庭園もあります。

N:お庭に込められた意味を理解すると、また違った景色が見えてきますね。おもしろい!

I:絵画を鑑賞する感覚に近い気がしますね。お庭には造り手の意図が何かしらあると思います。キャプションが設置されているお庭もありますし、ぜひ意識してみてください! 

N:これから日本庭園へ行く際は、Iさんに教えてもらったポイントをおさえて楽しんでみたいと思います。

庭屋一如の心

I:弊社の高岡社長がよく、「庭屋一如(ていおくいちにょ)」という言葉を使っていますよね。 

N:「庭と建物は一体である」という意味ですよね。タカショーが理念として掲げている「5thROOM(フィフスルーム)®3」にも通じるところがあります。 

I:日本庭園は建築とともに発展してきたと先ほど言いましたが、お庭と建物は切っても切り離せない深い関係にあります。

N:昔ながらの日本の家屋にはお庭があって、庇(ひさし)や縁側など自然を身近に取り入れるための構造や間取りになっていますよね。

昔ながらの日本の家屋

I: しかし、建物に耐震性や断熱性・気密性が求められるようになってきて、家の内と外が切り離されてしまい、庭への関心が薄れてきてしまっているのが現状です。

N:確かにここ最近、和風のお家はあまり見かけないですね。

I:家づくりを経験された方に話を聞いてみると、建物の間取りや内装・設備の仕様が決まった後に外構の打合せが始まることが多く、庭外構は後まわしになりがちなんだそうです。以前タカショーの公式Instagramでマイホームをお持ちの方を対象に、庭づくりで後悔したポイントを調査したんですけど、「家のことで頭がいっぱいで庭が全くの手つかず」「庭にかける予算が足りなかった」といったお声が多く寄せられました。

N:そうなんですか…。自然と触れ合う機会が少なくなってきている現代だからこそ、日本人が大切にしてきた「庭屋一如」の心を再認識する時ですね。

I:庭は一番身近な自然環境ですからね。私はマンションに住んでいるのですが、日本庭園を訪れるたびに、自宅にこんな縁側とお庭が欲しいなと思っています笑

N:あんな素敵な景色が毎日見れたら最高ですよね!現代では、食事や子どもの遊び場としてお庭を活用されている人が多いと思いますが、日本庭園のような「眺めるお庭」を住まいに取り入れるのも良いですね!

Iさん、日本庭園の歴史や魅力、観賞のポイントなどを教えていただきありがとうございました!

I:ありがとうございました!

まとめ

日本庭園は「使う・眺める」空間として文化や社会・宗教などと密接にかかわりながら発展してきたことがわかりました。

日本人は古来から庭と住宅を一体とする考えを持ち、それを実践するために知恵と工夫を凝らしてきました。家に自然を取り入れた暮らしの大切さを伝えるために、タカショーは今後もお庭の魅力や価値を発信し続けていきます。

  1. 文化財保護法において規定された、国指定の文化財の種類のひとつ。 ↩︎
  2. 小野健吉『日本庭園―空間の美の歴史』 p. iii ↩︎
  3. リビング、ダイニング、キッチン、ベッドルームに続く5番目の部屋。家と庭が一体になった空間のこと。 ↩︎

【参考文献】
小野健吉『日本庭園ー空間の美の歴史』(岩波書店、2009年)
田中昭三『よくわかる日本庭園の見方』(JTBパブリッシング、2007年)
田中昭三『歴史がわかる、腑に落ちる「日本庭園」の見方』(小学館、2002年)
枡野俊明『日本庭園の心得 基礎知識から計画・管理・改修まで』(国際花と緑の博覧会記念協会、2003年)

【画像出典】
二条城 二の丸庭園
瑠璃光院 瑠璃の庭
瑠璃光院 瑠璃の庭(新緑) 
瑠璃光院 瑠璃の庭(紅葉)
東福寺龍吟庵 龍の庭
昔ながらの日本の家屋

【画像提供】
平等院